君とリスタート 剣士様は抱き枕を所望する
昨日に続き、窮屈感でシオンは目を覚ます。
背後からライに拘束されている。
その手は、衣服越しにシオンの両胸を掴んでいる。
「んなっ!?」
「ん?おはよ、シオン」
「何処触って、と言うか、なんで居るの?」
「なんでって、俺との旅続けんなら、抱き枕になって貰わないと」
「続けられるのに越した事はないけど、私はライを好いて旅の同行を志願した訳じゃないって事、もう分かっているのでしょ?それと、この手そろそろ離して」
足をバタつかせて、胸を掴んでいる手を引き離そうと暴れてみるが、一切緩まない。
「シオンが警備隊だろうが、魔王の仲間だろうが、どんな目的を持っていようが、俺にはどうでもいいよ、なんの影響にもならない。一人旅で退屈してたし、シオンで暫く遊ばせて貰うのも悪くないかなって」
「そ、それはつまりあれか?私が弱いから、取るにたらない存在で、厄介者にするに当たらないと?」
「あ~、ん~、そう言う事」
随分と下に見られたのものだなっと腹が立つ気持ちは勿論ある。
けれど、今のシオンは、大好きな魔王様に幻滅されずに済んだ事への安堵感の方が大きい。
「ライ、私の目的は、貴方にサクラコを諦めて貰う事。絶対に、魔王城にもサクラコにも近づかせない。親愛する魔王様の為に」
「はいはい、頑張れ。今はさ、朝のまったり感を一緒に満喫しよ。シオンの胸、柔らかくて気持ちいい」
ライは、何の躊躇いもなく、慣れた手付きでシオンの胸を無遠慮に揉む。
男慣れしてないシオンは焦りもがくも、ライが逃がしてくれる事はなかった。
*****
「お嬢さん、お悩みかな?」
強盗事件を解決し、ライと別行動をとった後、シオンはとある淑女に話掛けられていた。
「私ね、一応占い師なの。男の事で悩んでると感じるわ、良かったら恋愛系に効力のある石もお勧めしてあげるわよ」
「えっと、間に合ってますので、失礼します」
「あら、釣れないわね」
軽く会釈し、その場を去ろうとしたシオンに、淑女は独り言をぼやく。
「男って言うのはね、惚れた女の頼みに弱いものなのよ」
淑女はシオンを見つめ、妖艶な笑みを携えていた。