怖そうな彼は実はとってもかわいい

「ねえねえ、昨日、公開した映画知ってる?『君恋』私あれ見に行きたくて」


 「えー!私もなんだけど!行きたい!」

 
 授業の間の短い短い休み時間。

 私たちはここぞとばかりに廊下に出て沢山話す。

 この時間があるから、退屈な授業を乗り越えられるんだよね。
 


 「じゃあ今日さ…」



 友達の1人がそう言いかけて、何かに気づいたらしく言葉を切る。



 「…?どうした…」



 「しっ、ちょい道空けて、来るよ」
 

 
 友達のその一言で私たちは誰が来るのか察した。

すかさず廊下の端に固まり、会話をやめてその人が通り過ぎるのを待つ。



 ……


「行った…?」


 「行ったね」


 私の一言でみんなが一斉に息を吐き出す。


 「っはあ〜怖かった…」


 「ほんといつ見ても目つき悪いし、不機嫌な感じでめっちゃ怖い」


 みんなが言っているのは、隣のクラスの矢熊(やくま)くん。

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