怖そうな彼は実はとってもかわいい
 「分かりました、絶対誰にも言わないので。またいつでも来てください」



 矢熊くんは、私を怪訝そうに見上げる。


 
 私の言葉が本当かどうか疑っているのだろう。



 でも、私本当に言うつもりない。



 たぶん矢熊くんに口止めされなかったとしても、誰にも言わなかったと思う。



 無言の矢熊くんに軽くお辞儀をして、私は席を離れた。



 背中に矢熊くんの視線を感じる。




 でも、それは別に怖くはなかった。



 それよりも、パンケーキを食べていたことを隠そうとしたこと、ちょっと照れて赤くなっていた顔を思い返していた。




 「え、めっちゃ可愛くない…?」




 ぽつりと漏れた言葉。



 ずっと怖いと思っていた矢熊くんに、まさか「可愛い」という印象を持つなんて自分でもすごくびっくりした。
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