[短]好きで、それから、大好きで。
散歩中、と文字を打って、最後に笑マークをつけた。
わたしも誤魔化すのが下手だなあと思いながら、どこかで気付いてほしかったのかもしれない。
一文字消すか迷って、そのまま送信した。
間髪入れずに、着信画面に切り替わる。
これはちょっと、出たくないなと苦笑する。
センシティブな部分に、どれだけ高野くんを引き込んでいいのかわからない。
わざと拒否してみると、着信音はぷつっと情けない音を立てて途切れた。
そうして、一秒、二秒と時間が過ぎる。
足はとうに止まっていた。
鼻緒に触れる親指の間が擦れる、わずかな痛みすら拾い上げてしまう静寂に、すっと背筋が冷える。
「……高野くん」
なんて、自分勝手なのだろう。
かけた電話を切られたら、わたしだってショックだ。
その想像ができるのに、どうして切ってしまったのだろう。
何秒待っても、着信もメッセージも受け取らないスマホ。
電波は正常であることを確認して、スーパーの駐車場のフェンスに寄りかかる。
迷って、悩んで、指先を見つめて、それから位置情報を高野くんに送った。
高野くんの家はここから20分はかかる。
バリバリの運動部の高野くんなら、走れば10分もかからないだろう。
10分、待って、来なかったら。
ごめんねと送って、もうそれで終わりにすればいい。