繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 その事に驚いたものの、私はなんとか気持ちを落ち着けて両手を握った。

(このまま自分の肩目掛けて引き抜けば……!)

 まさかこんなに早く教わったばかりの護身術が活きるなんて、と思いつつ勢いづけて引き抜くと、あっさりとスウェン先生の手から逃れることに成功する。

「あ、待て!」
「待てって言われて待つわけないでしょ!?」

 慌てて駆け出すと、なりふり構っていられないのか怒鳴りながら追いかけられた。

(このまま人目が多いところを走って……)

「?」

 一瞬気付かなかったほどの小さな違和感。
 だが、その小さな違和感に鳥肌が立つ。あまりにも静かだった。
 それに。

「誰も私たちを見ていない……?」

 大通りだから、人目があるから。
 何かをされても、これだけの目撃者がいるなら私に有利に働くはずだなんて思っていた。

 ――先生は何故私がひとりになるまで待っていたのだろうか。
 一緒にいたのはただのか弱い侍女であって、騎士でもなんでもないのに。

(私にあまり才能が無かったせいで思い付きもしなかったわ)

 きっと今、何かしらの魔法が働いているということに。 
< 101 / 126 >

この作品をシェア

pagetop