繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 後継者が私なのだ。結婚した翌日も、その次の日だって私はこのスクヴィス伯爵家にいるのだが、父というものはきっとこういう存在なのだろう。

 そんな父に私は抱き付くと、ぎゅっと抱き締め返してくれた。

「育ててくれてありがとう、お父様」
「こんなに立派に育ってくれなくても良かったんだけどな、私たちの宝物よ」
「ふふ、お母様もきっと空から見守ってくれているわね」

 そんな父のエスコートを受け、重厚な扉の前に立つ。
 この扉の向こうにいるのはもちろん、私と同じ真っ白な衣装を着たテオドルだ。

(長かったわ、でもやっと堂々と彼の側に居られるのね)

 誰にも許されなかった秘密の恋人。
 時には借金のカタに嫁がされそうになったりもしたけれど、やっと祝福されて彼の手を取れる日が来たのだ。

 ゆっくりと開いた扉の突き当たり。
 そこで待つ彼の姿が滲みそうになりながらも必死で涙を堪え、父と共に歩き出す。

 そして父の腕から手を離し、手を差し出してくれたテオドルの手を取った。
 愛おしくて、嬉しい。熱いものが胸の奥から溢れ止まらない。
 進む一歩を噛みしめながら、彼に手を引かれ隣に並ぶ。
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