繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 主語も何もない約束。
 何を待っているかを告げない約束を、彼はどう受け取ったのか。
 
 そもそも私たちは恋人ではないし、彼が私を好きだなんて言ってくれたこともないけれど、それでも想いは同じ気がするのは何故だろう。

 だから私は、そんないつかを夢見て今日も彼の隣を歩くのだ。

 ◇◇◇

「ソフィに婚約の申込みが入っている」

 それは私が二十歳になる直前。その瞬間は唐突にやってきた。

「婚約、ですか」
「あぁ。相手はロニー・テレーゼ子爵だ」
「テレーゼ子爵って、あの噂の? そもそも私とは四十近く離れておりますが」

 すまない、と俯く父にそれ以上言葉が出ない。
 父の悲痛な表情を見る限りこの結婚は避けられないのだろう。

 ロニー・テレーゼ子爵は社交界で常に噂の人だった。
 もちろんいい意味ではなく、悪い意味で。

 彼は今の年になるまでに四人の妻がいた。
 この国は重婚が認められていないので、婚姻期間は全員被っていない……にも関わらず四人もいる、その意味。

(いっそ離婚だったら良かったんだけど)

 全員死別だと聞いている。
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