繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 ハッキリとそう言われ、思わず俯いてしまう。

(もし最後に思い出が欲しいと告げたら、テオドルは抱いてくれるのかしら)

 ふとそんな自分に都合がいい妄想が芽生え、慌てて首を左右に振る。
 彼と私は特別な関係ではない。
 それにもしそんなことをしているとバレれば、彼もただでは済まないだろう。

 嫁いだ後、私が純潔ではないと知ったテレーゼ子爵がどう反応するかもわからない。
 初夜で殺されてしまう可能性もある。

 だが初夜で殺されなくても、いつかは殺されてしまうのだ。
 子爵の四人の妻たちと同じように。

(だったら、私は――)

「お願い、テオドル。私を殺して欲しいの」

 その思い付きは、ただの衝動だった。
 そもそも私が嫁がなくては契約は不成立になってしまうし、私を殺したことでテオドルがこの後どうなるかなんてことも考えていない、あまりにも無責任で衝動的なそんな言葉。

 だがその言葉を聞いたテオドルは、素直に腰から剣を抜く。

(どうせ殺されるなら、愛する貴方に殺されたい)

「……貴女はもう、俺を選んではくれないんですね」
「“もう”?」

 もう、とはどういう意味なのだろうか。
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