繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 だがその答えを聞く前に、私の胸にグサリと彼の剣が突き刺さる。

「――ッ、カハッ」

 口から逆流した血が溢れ、声が出ない。

(ありがとう)
 
 痛みはわからなかった。
 ただ、彼の名前を呼びたいのに口から溢れる血のせいで上手く喋れないのが悔しかった。

 私の返り血でテオドルが真っ赤に染まっている。
 まるで彼までも思い切り斬られたかのように赤く染まった姿を見て、何か既視感を覚えた。
 
 ――彼の傷が前面なのは、髪を掴まれ足止めされた私を助けようとしたからだ。

 いや違う。彼は怪我なんてしていないし、私の髪は掴まれるほど長くない。
 いや、長くなくても髪は掴める。ううん、でも“この髪は掴まれていない”。

 じわりと白く染まる視界の奥で、愛おしい想い人の真っ赤の瞳が涙で滲んでいくのが見えた。
 あぁ。泣かせたい訳ではなかったのに。

(そう思ったのは、これで二度目……?)

 まるで記憶が割れたガラスに反射するように周りへと散りばめられ、私は目を見開く。
 そう、これは二回目だ。

 彼は庭師だったはず。
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