繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
(捕まったらきっとテオドルが殺されてしまうわ)

 庭師のテオドル。我がスクヴィス伯爵家の庭師として働いていた一歳年上の彼とは幼馴染のように育った。
 一人娘の私と使用人の彼とでは身分違いだって分かっていたけれど、それでもこの想いを止められなくて秘密の恋人だった。

 母を早くに亡くし、後妻も取らず私を育ててくれた父のことは大好きだけれど、父が母を今も想っているように私もテオドルを特別に想っている。

(ごめんなさい、お父様)

「街までおりて裏路地に紛れれば――きゃあ!」
「ソフィ!」

 私の長い髪を掴んだのは伯爵家の騎士団の誰かだろう。
 当主の娘への行いとしては暴挙としかいえないが、このまま駆け落ちされるよりもいいと思ったのだろうか。
 主君の娘に対して魔法を使う訳にもいかないので、ただ単に余裕がないだけかもしれない。

 そのまま髪を無理やり後ろに引っ張られ、ブチブチと嫌な音がする。痛い。鋭い痛みが頭皮に走り、全身が熱を持った。
 それでも私は足を止めない。止める訳にはいかない。

 そしてその判断は誤りだった。いや、きっと最初から間違っていたのだ。
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