繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
「執事様がこの部屋を選ばれたんですよね」
「執事?」

 そうだったかしら、と記憶を遡るがそんな記憶はない。
 だが、リーヤが言うならばそうなのだろう。
 それに当時は十歳だったのだ、記憶が曖昧になっていてもおかしくないかと納得した。

「あ、いつも騎士団の訓練を見に行ってたと思うんだけど、今日は予定があるから遅れそうなの」
「騎士団の、ですか?」
「うん。今日は先にお父様のところへ行ってからにするから準備お願いね」
「はい、かしこまりました」

 リーヤにそう頼み、朝食の片付けも任せた私が早速向かうのは当然父のところである。
 借金が既にあるなら少ないうちに、まだ借金を作る前なら作らないように目を光らせなくてはならないのだ。

(その為に、ある程度私も執務を教わらないと)

 そう決意し向かった父の執務室。
 扉をノックすると、中から「はーい」と少し気の抜けた父の声が聞こえてホッとする。

(あの時の父は本当に辛そうだったもの)

 私に婚約の申込みがあったと告げた父はわかりやすいくらいやつれており、苦しそうだった。
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