繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 だからこそまたそんな顔をしていたら、と若干不安だったのだが、今度はそんなこともないようで私は安心感から元気よく扉を開く。

「え、えぇえっ!?」

 そして父の隣に立ち、書類へと目を落としている黒髪の青年に気付いて思わず声をあげた。
 黒髪に赤い瞳のその青年は、今頃騎士の訓練に励んでいるはずの――

「て、テオドル……!?」
「おはようございます、ソフィ様」
「ど、どうしてここにいるの? 貴方、騎士の訓練は……」

 燕尾服に身を包んだテオドルに唖然としながらそう聞くと、すかさず父が可笑しそうに吹き出した。

「何を言ってるんだ、ソフィ。テオドルはうちの執事じゃないか」
「え……、テオドルが、執事?」

 言われたことにぽかんとし、必死に記憶を遡る。
 おかしい。彼は騎士だったはず、騎士だったはずなのに、目の前にいるテオドルは燕尾服を着ているし、どう見ても騎士ではなく執事。

 というか記憶を遡っても執事。

「そうだったかしら。そうね、そうだったかも……?」

(殺されたってこともやっぱり夢だったのかしら)

 それはそうだ。だって回帰なんていう夢物語が実際に起こるはずはない。
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