繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 今朝の私は何故信じてしまったのか。
 
 未来で騎士のテオドルに殺されるなんてどう考えても夢の出来事。
 あまりにも長い夢だった。だって彼は我が伯爵家の執事なのだから。

「?」

 だがそう思えば思うほど霞がかったように思考がぼやける。
 釈然としないこのモヤのようなものはなんなのだろうか。

 けれど、あれがただの夢だとも思えない。

(まずは借金問題を解決するわ!)

 本当に私のただの夢で、借金なんてなければそれでいい。
 だがもしあれが予知夢のように未来を示唆しているとすれば?
 訳がわからず理屈も通らない部分が多いが、それでももしその未来が事実ならみすみす同じことを繰り返してたまるもんですか!

 そう決意した私は執事のテオドルへと視線を戻す。
 あれがただの夢なら本当に申し訳ないが、私は今もこの胸を貫かれたその衝撃を、逆流する血の不快感だって覚えているのだ。
 騎士の彼に殺されるとは思わないが、彼はどう考えても警戒対象。できれば距離を置き、関りを持つべきでは……

「ソフィ様?」
「くっ、顔がいいッ!」

 いや、顔だけじゃない、声もいい。
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