繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 しょもしょもと眉を下げながらそう言う父は情けない。

「そうすれば、マリアみたいな人を救えるかもしれないって思ったのになぁ」

(お母様……)

 私の母が病気で亡くなったのは、私が幼い時だった。
 流行り病で呆気なく亡くなってしまった母を、今でも父は想っている。
 もしあの時、そんな奇跡のような薬があったのならば。
 そしてもし、また目の前で大切な人の命が失われそうになっていたならば。

 大切な人の命を救える、そんな奇跡のような薬が本当にあれば、私もすがってしまうかもしれないとそう思った。

(私も父のことを責められないかもしれないわ)

 再婚せずに亡くなった母をずっと想っている父がそういったものへ執着してしまうのは仕方ないのかもしれない。
 だが、それと借金は話は別だ。

「ちなみに今いくらくらい購入されたのかお伺いしても……?」

 まだ借金はないと言っていた。
 ならば注入する魔力を買わなければ、きっと借金にはならないはずだ。
 利息とかついてませんように。あと引き返せる金額でありますように。

 そう必死に願いながら答えを待っている私へと告げられたのは、意外な言葉だった。
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