繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件

　だって、私の知っている回帰とは、回帰した本人が現実を変える努力をして違う未来を掴み取るものであって周りが勝手に違う役になっているものではない。
　もしそんな物語があれば、主人公は私ではなく配役の変わった人物だろう。
　だが、私が記憶を持ってるのだ。何もせず未来が勝手に変わるのに記憶だけ持っているという中途半端な回帰など、やはりあり得ないし現実的ではないと思える。

　となれば、過去に戻ったというより何かの力で未来を『夢』として見たと考える方が余程現実的だった。
　例えば自身の魔力の影響で感覚が鋭くなり、危険予知を出来るよになった、とかだ。

（普段見逃す記憶外のことが頭に残って無意識に夢の中で再生してる、とか。そう考える方がそれっぽいのよねぇ）

　もちろんそんな推測も、矛盾がいっぱいでわからないことだらけなのだが――

「考えてもわっかんないことはわっかんないものね！」
「ソフィ様？」
「あ、ううん。こっちの話！　ほら、人生って一度しかないものだから！」
「……えぇ。その通りでございます」
「テオドル？」

　私の適当な誤魔化しの言葉に、テオドルの表情が少し暗くなりドキリとする。