繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
　前のめりで私がそう詰め寄るのは、スクヴィス伯爵家が雇っている私の家庭教師のスウェン・ドレクスレル先生だ。

　彼は伯爵家出身でありながら三男であった為魔法学園を卒業した後に家庭教師の仕事を始めたという。
　まだ二十七でありながら保有する魔力が多く、魔力の運用や応用に長けており引っ張りだこなので、どうして私の先生になってくれたのは正直謎だった。

（私も先生のこと嫌いじゃないのよね）

　艶やかな黒髪は触り心地が良さそうだし、ドキドキと胸が高鳴る訳ではないが穏やかな時間はむしろ好ましい。
　恋愛とは違っても、結婚相手がこういう人ならば理想的かもしれないとそう思った。

（三男じゃなければなぁ）

　家同士の繋がりは持てても相手も同じ伯爵家であれば現状と変わらないし、三男へ嫁いでも爵位は継承できない。
　私が産んだ子供をスクヴィス伯爵家の跡継ぎにすることは出来るが、それしかメリットがないのならば彼を政略で選ぶ意味もないだろう。

「とりあえずまずは、宿題と今日の勉強をしてからですよ？」
「はぁい」

　惜しいな、なんて思いつつ先生に指定されたページを開く。
< 39 / 126 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop