繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 彼は肩口から腹部まで思い切り斬られているらしく、服だけでなく地面までもを赤く染めている。どう見ても致命傷だ。
 彼の傷が前面なのは、髪を掴まれ足止めされた私を助けようとしたからだろう。

 私と彼は、ここで死ぬ。

 じわりと白く染まる視界の奥で、愛おしい恋人の真っ赤の瞳が涙で滲んでいくのが見えた。
 あぁ。泣かせたい訳ではなかったのに。

 ごめんなさい。私はその謝罪を彼にちゃんと伝えられたのだろうか。
 本当は彼と幸せになる未来が欲しかったのに、私は身勝手に彼の未来を奪ってしまったのだと思い絶望する。

 愚かだった。愚かな私は、失ってなおやはり彼へと手を伸ばすのだ。
 この手に、もう感覚がないのだとしても――
 
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