繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件

6.その野望が事実である可能性は

(ど、どうして怒っているのかしら)

 いつも以上ムスッとしたテオドルが、私たちを引き剝がすようにツカツカと近付いてくる。
 そして私たちのすぐ近くに立った。

(繋いだ手を無理やり剥がすのかと思ったのに)

 三男といえど先生も伯爵家。そして私は彼が執事として仕える家の令嬢。
 勝手に触れることは出来ないということなのだろうが、その事実がどうしてか寂しく感じた。

「別に何もしていないわ。お見送りに手を握ることもあるでしょう」
「そんなお見送り聞いたことはありません」
「そんなことないわよ。出迎える時だって、『よく来たわね!』って手を握らない?」

 ちょっと強引な説明をしつつサッと先生の手を離し、特別なことではないとアピールするように手のひらを振ると、物理的に離れたからかテオドルの強張った顔が少し軽減する。
 
(もう、可愛いわね)

 彼のこの表情が嫉妬から来るものだったらいいのに、なんてあり得ないことを考え私は思わず苦笑した。

「ね、少し散歩しない?」
「かしこまりました」
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