繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 じわじわと頬が熱くなっていくのを感じ、彼の後ろを歩いていて本当によかったと思っていた。

(あんな妄想をするだなんて、私は欲求不満に違いないわ!)

 貴族令嬢として純潔であることの重要さを思い出しながら、顔から火が出そうなのを必死に堪える。
 どうかこのまま振り向かないで、と私は心の底からそう願ったのだった。


「送ってくれてありがとう」
「いえ、執事として当然のことをしただけです」

 恭しく頭を下げるテオドルをムスッとしながら眺める。

(本当に一度も振り向かないなんて!)

 振り向かないで、なんて願っていたくせに、本当に一度も振り向かれなかったことに機嫌が悪くなる。
 エスコートではなく完全に道案内のような対応を取られたことに不満を感じるなんて私はまだまだ幼いようだ。

(でも、一度も振り向かないのは酷くないかしら)

 万一私が付いて行っていなければどうするのだろうか。
 もちろんこの邸は私の家なのだから当然迷うことなどないが、それでもうっかり転んだり他のものに目を奪われて遅れるかもしれないのにだ。
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