繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 まるで全てがスローモーションのように緩やかに動く。その世界の中で、テオドルが何かを叫びながら私へと手を伸ばした。
 私も反射的に彼の手を掴もうと手を伸ばす。
 だが、私と彼の手は触れることは無かった。

 届かなかったのではない。
 彼が、途中で手を伸ばすのを止めたからだ。

「テオ、ドル?」
「身分があれば……」

 彼が何かを呟くが、私にはわからない。
 ただただ悲しかった。手を掴んでくれなかったからでも、手を伸ばすのを途中で諦めたからでもない。
 ――テオドルが、泣いていたから。

「私、また貴方を泣かせちゃったのね」

 また、ってなんだろう。わからない。わからないけど、そのことが一番悲しい。
 でも叶うなら、どうかこの先の人生はテオドルが少しでも笑っていられる人生でありますように。

 赤く滲む彼の目元が、落下しながらもはっきりと見える。
 彼の涙を拭ってあげられないことがこんなにも悲しいだなんて思わなかった。
 そう思うのは何回目なのか。
 
 まるで記憶が割れたガラスに反射するように周りへと散りばめられ、私は目を見開く。
 あぁ、これは三回目だ。
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