繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
「もちろんです。軽く汗を流してからにいたしますか」
「うん、嬉しい」

 カーテンから透ける光はまだ薄暗く、早朝と呼ぶのも躊躇うような時間。
 そんな時間なのに叫び声ひとつで飛び込んで来てくれる彼女に甘え浴室にも付き合って貰った。

 水を張ったバスタブに彼女の魔力で熱を加え温度を調整する。

「こうして思うと魔法って便利よねぇ」
「最初からお湯を出せればもっといいんですけどね」
「流石に何もないところから何か出すことは出来ないわよ」
 
 小説で見る魔法はもっと万能だったが、実際の魔法なんてこの程度。
 それでもわざわざお湯を沸かしてからバスタブへ入れなくてもいいのだ、魔法とはやはり便利なものである。
 
 貴賤問わず皆平等に魔力はあるが、魔力をどこまで使えるかは本人の資質次第。
 使い方次第でどんな奇跡も起こせるとは聞くが、その奇跡がどのようなものかは教科書には載っていない。
 結局はファンタジーの域を出ないのだ。

「ふふ。ですが人は持っている魔力の半分も使いこなせていないそうですよ。もし全て使える人がいれば、きっとその人が奇跡を起こすのでしょうね」
「リーヤってば、乙女ね?」
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