繰り返し何度も私を殺すその人が何度死に戻っても好きな件
 コツン、と私の指先に触れたのは彼が持ってきていたナイフだった。

(どうしてこれが今私の手元に置かれているの?)

 そもそも殺したいならこのナイフで刺すか首を斬ってしまえばいいのに、どうして彼はわざわざ絞殺を選んだのだろう。時間をかけて殺したい?
 使わないなら持ってくる必要なんてないはずだ。
 彼の使わないナイフをわざわざ持ってきて、そしてそのナイフを私が手に取れるところへ置く意味とは何なのか。

(まさか、“私に殺されたい”ということ?)

 その結論に辿り着いた私の心臓が強く跳ねる。
 彼の望みは本当は私に殺されることだったのだとしたら。
 だから毎回私を殺すその瞬間に泣いていたのだろうか?

 どういうことかわからない。
 この回帰の目的と真実はどこにある?
 彼がこの巻き戻しの魔法を発動するそのキッカケは何だった?
 今までの共通点とは――

 ――『私の幸せ』?

 その答えに辿り着いた私は閉じていた目を見開いた。
 目の前には今まさに私を殺そうとしている人。そんな人が願っているのが、私の幸せだなんてあり得るのだろうか。

 驚いて彼を見上げると、彼の首に違和感を覚える。
< 88 / 126 >

この作品をシェア

pagetop