幾度ものキャトルセゾンを見送って【新作】
私が微笑んで言うと、

「本当に素敵な笑顔の持ち主だよね」

眩しそうに目を細めて言う夏川さん。

「え?」

「たこ焼き売っている最中も、ずっとニコニコしてお客さんの相手してくれたから、自然と周りの人たちも笑顔になってたよ。気付かなかった?」

そんなこと、初めて言われた。

いつも、周りからは、

「気の毒すぎて泣けてくるわ」

「自分が同じ立場だったら、孤独に耐えられない」

そんな憐憫や同情の言葉ばかりかけられてきたので、シンプルに笑顔を褒められたことがとても意外だ。

「私、自分の笑顔に自信がなかったから、そう言ってもらえて嬉しいです」

「え?そうなの?」

「はい。だって、私って八重歯があるでしょう?一度は矯正しようとしたんですけど、すぐにギブアップしちゃったんです。それがコンプレックスで…」
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