幾度ものキャトルセゾンを見送って【新作】
何度目かの、二人きりのドライブ中、カーレディオからは、フレンチ・ポップ特集が流れてきた。

「あ、こういう曲、オリエちゃんの好きそうな感じじゃない?」

夏川さんに言われ、

「まさにそう。私、ラジオDJになるのが夢で、高校時代は放送部の部長だったのね」

「へぇ…どんな高校生活だったの?」

「私、勉強しか取り柄がなかったから、とりあえず県内トップの進学校に入ったんだけど…」

「あはは!“とりあえず”で、県内トップの進学校に入れるって凄いね」

夏川さんはクスクス笑う。

「凄くないよ。他に得意なことないし。親が相次いで死んじゃって、大学受験すらしてないから、結局は高卒だし。いくら県内トップの進学校出身でも、それが通用するのは地元だけ。学校の勉強なんて、何の役にも立たなかったわ」
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