幾度ものキャトルセゾンを見送って【新作】
「お姉ちゃん?どうしたの?」

「うん…オリエは元気にしてた?」

「私は元気!お姉ちゃんは?」

「そうね…」

そんな曖昧な言葉しか返ってこない。

私のほうから、最近の暮らしぶりを話すと、

「幸せみたいでよかったわ。その彼とは結婚するの?」

思いがけない質問に、返す言葉が出てこない。

「話してなかったけど、私も発達障害なのよ」

姉から意外な事実を打ち明けられた。

「同じ当事者の先輩として言うわ。結婚となれば、慎重にならないといけないってこと」

「お姉ちゃん…本当にどうしたの?」

「ううん、何でもない。じゃあまたね」

よくわからないまま、電話は切れてしまった。

変なの。

それよりも、今日は夏川さんとデートなのだ。

色違いで何着も持っている綿100%のチュニックに着替えた頃、インターホンが鳴り、私は急いで出掛ける。
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