幾度ものキャトルセゾンを見送って【新作】
その後、母親が心筋梗塞で死んだ時、父が姉に電話していたものの、

「そういうふざけたことを言うなら、本当にお前には一切相続させないように遺言状を作成するからな!」

そう怒鳴りつけて、電話を切った父。

姉は、母の葬儀に来ることを拒み、実際に来なかった。

父いわく、長女が母親の葬儀に来なければ恥をかくとのことで、敢えて親戚も呼ばず、私と二人だけの家族葬にしたことで、親戚と酷いトラブルになったようだ。

もともと付き合いは殆どない親戚だったが、これで完全に絶縁になった。

父親は、自分が末期がんだと判った時、実は仙台にマンションを所有していることを初めて打ち明け、遺産は全てお前一人に相続させるから、お前だけは俺を見捨てないでくれと縋り付いてきた。

本音を言えば、私も両親のことは苦手だったが、突き放せるほどドライにもなれず、中途半端な気持ちで父親につきっきりとなった。
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