幾度ものキャトルセゾンを見送って【新作】
「ごめんなさい…!」

「何で謝るの?そもそも、帰りに会計済ませてきたんだから、何の問題もないのに」

「そうだけど…」

私は、どうしたって一方的に夏川さんに迷惑をかけてしまう。

「オリエちゃん。最近、元気ないね。何でも話してよ」

いつもと同じ倒し具合の助手席から、ハンドルを握る夏川さんをそっと盗み見る。

「夏川さんにとって、私と付き合うメリットなんて何もないと思ったの」

「え…?いきなり何を言い出すの?」

夏川さんの表情が曇る。

「だって、本当のことじゃない。いつも私が支えてもらうばかりで、何一つしてあげられることがないなんて…」

「別に、何かしてほしいなんて思ってないよ」

そんなことってあるだろうか。

私なりに、恋愛に関してリサーチしてみたところ、世の中の男の人は彼女に対して不満だらけだったりするようだが。
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