幾度ものキャトルセゾンを見送って【新作】
「どうした?体調悪いの?」

「そんなことないよ」

「だったら、遠慮なく食べてよ」

「あんまり食欲がなくて」

「いつもならお互い、食欲の秋なのに。心配だなぁ…」

どうして、私は必ず夏川さんを心配させてしまうのだろう。

心底、自分が嫌になる。

食事の後、また自宅マンションの屋上で夜景を二人して眺めていた。

「ところで、大事な話って?」

夏川さんに尋ねられ、勇気を振り絞る私。

「色々考えたんだけど…。私、これ以上、夏川さんの重荷になりたくない」

そう告げたが、夏川さんは不思議そうな顔。

「急にどうしたの?」

「だって、私はいつも夏川さんに支えてもらうだけで、何ひとつ夏川さんにしてあげられない。それがつらくて仕方ないの」

彼の瞳をじっと見つめてキッパリと告げた。

「僕との付き合いがつらくなった?」
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