幾度ものキャトルセゾンを見送って【新作】
「そうじゃなくて…!一方的に支えてもらってばかりなのがつらいの」

すると、夏川さんはますます不思議そうに、

「僕は、一方的に支えてなんかいないよ?」

本気でわからないという様子だ。

「そんなわけないじゃない。触れ合うことすらままならない上に、無力すぎて何も出来ないとか、私なんて何の役にも立たない…」

つらくて、俯いてしまう。

「オリエちゃん。そんな風に一人で思い詰めないで欲しい」

「だって…役に立たないだけでなく、私の問題で、恋人らしいことも何ひとつ出来ないようじゃ、いつか夏川さんにも限界は来るでしょう…?」

ほんの少しの沈黙のあと、

「僕は、オリエちゃんと一緒に居られるだけで幸せなんだよ。何かして欲しいと思って付き合ってるわけじゃない」

「そんなことってある…?」

「あるよ。オリエちゃんもそうだと思ってたけど、違った?」
< 52 / 57 >

この作品をシェア

pagetop