【完結】亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「覇王は毛嫌いしたっていい。でも俺は君の全てを愛している。エフェーミア姫という立場の君も、強く美しい占い師のマキラも……。初恋の姫君は憧れのままだ……でも今の強くて美しい君に、心底惚れたんだ。君ほど素敵な女性はいない……」

「シィーン……」

「だから君も……ただ君を愛する男を、愛してほしい」

「貴方は素晴らしい人だわ……でも……私は」

「でもと言っても、ダメだと言っても、俺はもう絶対に君を離さない」

 両肩をシィーンの逞しい腕で支えられても、マキラはまだ首を振る。

「わ、私は……貴方をきっと不幸する。帝国の反乱分子だって……私を狙っている」

「じゃあ、君の先読みが初めて外れることになってしまうだろうね。君が狙われているのなら、余計に離すはずがないだろう」

「……貴方の未来だけは読めないの……」

「それは俺がこの世界の真ん中の存在で……神の力を与えられし人間だからかな? きっと特殊な存在なんだ。君は俺が負けるとでも思っているのか?」

 先ほどのシィーンの力を見れば、納得しかできない。

「そんなことないわ……シィーン……私……」

「これからの未来を俺と一緒に生きていくんだ。亡国の呪縛から少しずつ開放されよう。反乱分子からも必ず守る」

「……貴方と……未来を……」

「そうだ。幸せになろう……君は、俺の傍にいるんだ」

「……いいの? ……私なんか」

「君が幸せになることが、何より亡国の皆の供養になると思う」

「……でも……私……悪霊みたいなものよ」

「悪霊だと? こんな魅力的な悪霊がいるものか。 しかし、そうだな……俺は君に魅了の呪いをかけられたかもしれない」

「えっ……?」

 シィーンは思い切りマキラを抱き寄せた。
 温かい腕が、逞しい胸がマキラを包む。

 シトラスムスクの香り。シィーンの香りだ。

< 101 / 108 >

この作品をシェア

pagetop