【完結】亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される
「救護院は国民からの税金で建てた病院だ。傷病人を助ける医者がいる。身動きのとれない人を助けて運ぶこともする。侍女さんの街にも最近作られたんだ。城の周りにはいくつかあるんだが、まだマキラの住む近くでは整備されていなかったか……急がねば」
マキラは医者にかかる事がないように、普段から健康には十分に気を遣っている。
占いの相談も若い女性が多いので、健康に関する悩みは少なく、救護院の存在は知らなかった。
「まぁ素晴らしい試みね……! だから周りの人も助けてくれたんだわ」
「そうだ。今までは皆が生きるのに必死で、誰かを助ける余裕もなかった……でも国民同士で支え合って、少しずつでも、みんなで助け合う世界にしていきたいんだ。国民が納めてくれた税金は、王や貴族が贅沢するためのものじゃない、みんなの生活をよくするために使う」
「……シィーン……」
彼の言葉を聞いて、マキラの瞳が熱くなる。
「貴方は本当に素晴らしい人だわ……」
シィーンは微笑みながら、マキラを強く抱き締めた。
侍女が助かったことで、マキラは安心してシィーンの抱擁を受けることができた。
昨夜も何度も求め合って、愛し合った。
それでも離れていた間の寂しさを埋めるには足りない、とシィーンはマキラに口づける。
胸元には、シィーンが散らした愛の花が紅く咲いていた。
「そういえば……エリザ姫はどうなったの?」
「まだ迎賓館にいるよ。なぜだか自分の領地へ帰ろうとしない」
「彼女はきっと貴方が好きで、貴方と結婚したいのよね……」
愛するマキラにそんな風に言われて、シィーンは渋い顔をする。
「俺に惚れているとは思えない態度だがな……何故だか彼女から最近ずっと、強く婚姻を求められていてね。彼女も反乱軍の一味で、それの焦りなのか? 無断で宮殿に来た事も叱責はしたんだが、俺が自分を抱かない不甲斐ない男だからだと反省する様子はない」
「まぁ……」
確かにあの激しさは、焦りからきたものだったのかもしれない。
何か反乱軍の絡みなのか……謎は深まる。