亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

 この世界には魔術がある。
 火・水・風・土。
 そして光と闇。
 しかしこれを操るには、特別な才能と教育が必要だ。
 血筋と才能と教育、選ばれた者が幼い事から鍛錬し続けてやっと手にできるものだった。

 それを、一般市民、果ては落ちぶれた者達にも闘う術を与えた方法が生まれた。

 それが禁魔道具――。
 修行する必要もない、誰でも一流の魔術戦士になれる。
 しかし、一般市民に隠されていた禁魔道具のデメリットがあった。

 死に至る副作用だ。

 当然、今の覇王の統一世界では全面的に禁止されている。
 だが裏での取引や、密売などが行われている話は知っていた。
 
「やめなさい! 死ぬわよ!」

「あはははは!! ハイになるってんで試してみたかったんだ!!」

 雑な説明しか、受けていないのだろう。
 快楽麻薬とでも思っているようかのように、男は笑う。

 男の手のひらには丸い鏡のような、禁魔道具が取り出された。

 封じ込められた魔術はそれぞれだ。
 ほぼ軍事目的の魔術が込められているが、個人的な恨みを晴らす専門の禁魔道具士もいるらしい。

「一体、なんの術……?」 

 マキラは冷静に剣を構えながら考える。
 また、ぬるい風が吹く。
 
「――逃げた方が、いい? ……でも……」

 ますます、許せない。
 この禁魔道具によって今後こいつらの犠牲者が増えるかと思うと、逃げていいのかと思う。

「ぎゃはははは!! ぶっ殺して、それから犯してやるぜ!!」

 ジリ……とマキラが後ずさったのを見て、男は禁魔道具での勝利を確信したようだった。
 嬉しそうに、笑って舌なめずりをした。

「へぇ? 随分と楽しそうなことをやっているな! 俺も混ぜてくれないか?」

 マキラと荒くれ者の間に、まるで花火が鳴るような軽快な声が響いた。
 

 
 
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