亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される
「ここから少し道が悪い。というか道がないんだ」
「だって……私有地なんじゃないの? ここ……入って大丈夫?」
河川の周りも、首都で管理している場所と個人の土地がある。
そこに『私有地』という看板が立っていた。
「あぁ。大丈夫だ」
「えっでも……」
「心配するなマキラ。あぁ君は正義感が強いからな、此処は俺の土地だから大丈夫なんだ」
「本当に?」
「あぁ、安心したろ?」
シィーンがまた笑う。
つまりは観光客ではないということか。
彼の言葉が本当かどうかは、確かめようもないがマキラは信じることにした。
「行こう」
そして、そのまま手を握られた。
一瞬ドキッとしたが、道が悪いからマキラを支えてくれているのだと気付く。
「道が悪いから捕まっていたらいい。それに虫が多い。でも俺の足元にはたっぷり虫除けをしてきたから、そばにいた方がいい」
「虫除けは私もしてきたわ。この道は草がボーボーで、やだ! 刺さるわ!」
「あの木陰の方に行けば、整備してある」
外から私有地を見て、整備されていると分かれば誰かが入り込む可能性もある。
なので川辺の木で見えなくなる場所までは、わざとに整備せずに草木を生えさせていたようだ。
「うん、いい感じだな」
木陰の先には、大河を眺めながらゆったりと過ごせるこじんまりとした小屋が作られていた。
「わぁ……信じられないわ」
「焚き火をしよう」
「手伝うわ」
ランタンをウッドデッキに置いて、焚き火台にシィーンが火を点ける。
彼より先に誰かが来て、準備していたようだった。
木のソファには綺麗な織り布がかけられ、クッションも用意され、木箱には色々な道具がある。
ウッドデッキは少し河までせり出し、小屋の横にある大きな木にはハンモックもある。