亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「もう」

「遠目から見て、綺麗な女が男達に襲われていると思って駆けつけたんだ」

「そんな遠いとこから見ていたの?」

「覗いていたわけじゃない、かなり遠くで見えたんだ。俺は目がすごくいいからな。急いでも間に合うかと思ったが男達が吹っ飛んでいった! すごいな!! マキラは強くて美しい、いい女だ」

「……いやね、私の顔はベールで覆っているわ……綺麗とか、そんなのどうしてわかるの?」

「綺麗に決まっている。俺がそう思うから」

「えっ」

「賭けには負けた事がないんだ、俺は」

「賭け」

「あぁ」

 何故か自信満々で、シィーンはそう答えて酒を飲む。

「マキラ、賭けに勝てたかどうか……君の素顔を見せてくれないか?」

 彼の胸に身を預けているので、頭上から彼の優しい囁きが聞こえる。
 先ほどの大笑いの酒飲み時間じゃない。
 彼の指先が、そっとマキラの口元の薄布に触れる。

 拒めない……。

 マキラは思った。
 
 拒みたくない。
 
 そのまま、シィーンはマキラの頭のベールをまず外した。
 人前でベールを外したのは、いつぶりだろうか……?
 恥ずかしくなって下を向くが、耳にかけたもフェイスベールも優しく取られて、顎に手を添えられた。

「シィーン……」

 真夜中なのに、太陽のように煌めくシィーンの瞳。
 心臓がドキドキと、早く脈打っているのがわかる。

「なぁ俺の勝ちだろう……? なんて綺麗なんだ……マキラ……」

 彼の瞳が閉じられて、唇が寄せられた。
 肩を抱く手には、優しく力が込められる。

 まるで魔法にかかったように、マキラは瞳を閉じてしまう。

 二人の唇が合わさり、重なった。
 
  
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