亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される
「マキラ……?」
「むむむーーーー!!」
少し離れたシィーンだったが、また優しくマキラの肩を抱こうと手を伸ばす。
しかしマキラは、警戒した猫のようにキーッとなっている。
「俺だって、遊びのつもりで口づけしたわけじゃないぞ」
「う、嘘よ。貴方はなんだか、女にすごく慣れている感じがするわ!」
「まぁ、若い頃はそういう遊びもしたさ。お互いに楽しむだけの夜だったりね」
「若いって……あなた今は何歳なの?」
「俺は23歳だよ」
マキラは今年で20歳。3つ年上ということだ。
「まだ若いじゃない!」
23歳で若い頃っていつの頃!? とマキラは思う。
世界では、18歳で成人が一般的だが、そんな年頃を言っているようにも思えない。
「あはは、まぁ過去にそういう事は遊び尽くして、今更そういう遊びには興味ないってこと」
「さ、サイテー!!」
「だから昔の話で、今は遊ぶ気持ちはないんだって」
そう言われてみればそうなのだが、なんだかイラっとしてしまう。
シィーンが女にモテまくるというのは、男性経験のないマキラでも理解できるからだ。
「じゃあ今の口づけは一体なに!? 一緒に戦った仲間だからの口づけ!?」
酔っ払ってはいるものの、いつも冷静で皆のために未来を予知しアドバイスする占い師マキラだとは、自分ですら思えない。
でもまさか、自分が口づけをするだなんて!
恥ずかしくて、顔が熱くて、余裕のあるモテ男の過去にイラッと、じゃなくて……あぁ混乱!
「プンプンしてるのも可愛いな」
「もう、バカにしないで!」
「バカになんか一切していないよ」
自分がバカみたいなのは、マキラ自身がよくわかっている。
それもこれも、何も先が見えない、この男のせいだ。