亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

 シィーンはプリプリしているマキラにも、微笑んだままだ。

「じゃあ、ハッキリ言おうマキラ」

「き、聞かせてもらおうじゃない」

「君に惚れて、綺麗な瞳を見たら口づけしたくなった」

 優しい、優しい囁きだった。

「えっ?」

「愛しくて、君を抱きたいと思ったからだよ」

 優しくて、そして甘い囁きが……マキラの耳をくすぐった。

「ひゃーーーー!?」

 またシィーンの手がマキラの肩を、抱こうとしたがマキラはバッと立ち上がり、ザーッと焚き火の向こう側に行ってしまう。

「えっ? マキラ」

 シィーンにとっても、マキラの動きは衝撃的だったようだ。
 目を丸くしている。

「ななななな何言ってるの!?」

「なにって、そんなに変なことか?」

「私に惚れたって……そんな、そ、そんなそんなの……だだだだだ抱く!?」

 マキラは自分の顔が真っ赤になっているのを感じるが、どうにも冷静でいられない。

「君くらい美人でいい女なら、いくらだって男に惚れられた経験だってあるだろう?」

「ないないない、ないわよ……!!」

 私生活で男性と関わることなど、殆どない。
 警戒もしているので、自分に好意を持ってる様子を見ると距離をとってしまう。
 だから告白なんて事にはならないし、男友達すら、いた事はない。
 
 占い師の力が無くなるわけではないが、当然に王女としての純潔さを求められていた立場でもあった。
 
 なのでマキラは、とんでもなく奥手で初心だった。
 恋愛相談も、先読むと人の心を上手く読む力でアドバイスをしているだけで、自分の経験はゼロ。
 仕事なので、恋愛指南書なんかは読んだこともある。

 しかし自分の経験はゼロなのは変わらない。

 目の前で『抱きたい』なんて言われるのは人生で初めてだ。
 しかも、この……誰が見ても好意を抱く、こんな顔も身体も良い男に……。
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