亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「あぁ。そうしようぜ! うん。いい酒がまだあるはずなんだよなぁ~~~」

 度数の高い酒瓶も、残りあと少し。
 シィーンがそれをチャプチャプと揺らしながら顎に手を当てる。
 マキラは自然にまたソファに戻る。

「まだ隠してたの!?」
 
「あははは! 忘れてたんだ。このハンモックの木の下に……」

「そんなとこに!?」

「ここはなぁ、いい土蔵になってて……あったあった開けるぞ~」

「わぁ……見たいわ!」

 シィーンを追いかけて、また酔っぱらい同士が笑い合う。
 二人で土蔵から酒を取り出し、また酒を飲む。
 
 シィーンは言ったとおりに、同じソファに座ってもマキラには指一本触れない。
 時に目が合っても、楽しそうに優しく微笑む。

 それから笑いながら、あーだこーだとくだらない話を続けた。
 彼は、どこかの国の神話や昔話をよく知っていて、マキラが続きを強請るとシィーンはまた嬉しそうに語りだす。

「貴方のお話、とても面白いわ」

「じゃあ次は、そうだな。とっておきのをしてあげよう」

「嬉しい……聞かせて」

「これはだな、とある化け物に襲われて困っていた村の話だ……ある日そこに若い旅人が……」

 シィーンの声が耳に心地良い。
 
 そして焚き火の木がなくなり、ついに朝日が昇り始めた。
 オレンジ色の日に照らされたシィーンは、威厳を感じさせる独特の雰囲気をまとっているように見える。
 ただ、二人共かなり酔っている。
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