亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「……わかったけど……私の家を見つける賭け?」

「賭けはそっちじゃない」

 家に来て、また今日のように楽しく飲むのかな? そう思った。
 だが……シィーンの瞳は、急に熱っぽくなってマキラを見つめる。

「もしもまた出逢えたら……その時は君を抱いて、俺のものにする……それが俺の賭けだ」

「えっ……」

「遊びなんかじゃないよ」

 朝焼けに照らされて、シィーンの黄金の瞳も、紅色の髪も燃えるように煌めいた。
 見つめられたマキラの心も、熱くなる。

「え……あ……は、はい……」

 ドキン! ドキン! と彼の情熱的な言葉で、心臓が燃やされたよう……心臓がうるさい。
 情けない返事しかできなかった。
 
「答えを待ってるよ」

 シィーンは花に口づけをした。
 愛を込めるように……。
 そして、マキラはそれを受け取ったのだ。

 愛の花……ルビーニヨンを。

 朝市がもう始まっている人通りの多い通りまで送られて、シィーンとは別れた。
 
 マキラはもうベールをかぶり、口元もいつものように隠している。
 だから、彼女が赤い花を胸に抱いてどんな顔をしているかは誰も見ることがなかった。

 花が枯れるまで数日、マキラは何を選ぶのか……。
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