亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

ルビーニヨン、初恋の香り


 朝帰りしたその日は、占いの予約は入れていなかった。
 質のよいお酒ばかりだったんだろう。あれだけ飲んだのに悪酔いもせず、ただ泥のように眠った。

 沢山の夢を見た。
 予知夢を見ることもあるのに、未来のことは一切出てこない。

 幼い頃の幸せな日々。
 絶望した祖国の滅亡、そして逃亡、恐怖と更に追いかけてくる、絶望。
 焚き火を見つめ生き残る事を誓い、努力した日々。
 世界統一されて、命が救われたと安堵し、もう少し早ければと泣いた日。
 
 街の人の沢山の悩みを聞いて、先読みをしてアドバイスをし、助ける毎日……。

 自分の存在意義はなんだろう?
 沢山の人に占い師という自分を望まれているのに、本当は心のなかでいつも寂しかった。

 みんな本当の私なんか知らない……。

 それがあの時……あの人の腕のなかでは、寂しさが消えていた。
 本当の自分でいられる時間だった。

 無邪気に笑って、それを自然に受け止めてくれて、抱き締められたら腕の温かさに安心した……。

 初めてあったばかりなのに……何故……?

 「シィーン……」

 見つめられて、彼に口づけされる……あの時の温もり、感触……そして胸の高鳴りでマキラは目を覚ました。
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