亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「もう……破廉恥だわ、私」

 水を飲もうと台所へ行くと、小さなダイニングテーブルの一輪挿しに差したルビーニヨンの花が目に入る。
 この花が枯れるまでに……窓辺に置けば、シィーンが来る?

「どうやって、わかるのよ? ……わかるわけないじゃない……」
 
 少しご飯を食べて、うとうとと眠ってしまって起きたら、また玄関に書面が残っていた。
 嫌な予感がして、読むとハルドゥーンからの手紙だった。
 
 このままでは強制的にでも、城へお連れしなければならないと……。
 
 ゾッとした。

 夕方だったので、マキラは侍女へ速達で手紙を出した。
 侍女の元へ逃げたいと……。
 彼女も今、どんな暮らしをしているかわからない。
 無理であれば断ってほしいとも書いた。

 でも逃げなければ!! それは変わらない。

 書面にはエリザ姫の独断であり、覇王は関係ないと書かれたハルドゥーン直筆の手紙も入っていた。
 我が主、ガザルシィーン王は関係ないと……。

「王家の使いって言ってたのに……覇王は関係ない? 覇王をかばっているの……? この手紙は燃やしてほしいって……ものすごく自己中」

 関係ないわけがない!
 覇王に何も抵抗できない怒り、悲しみ……。

 そして、朝まで一緒にいたはずなのに……シィーンと離れた寂しさ。

 あの時、口づけの続きを拒まなければ、どうなっていたんだろうか?
< 33 / 76 >

この作品をシェア

pagetop