亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

一夜限りの夜


「……シィーン……?」

 まさかの声に、マキラは驚く。
 一瞬で心が痺れたように、動けなくなった。

「ふふ。ひどいな、開けてはくれないのか」

 扉の向こうで、笑う声。

「あ、待って!」

 慌ててドアを開ける。

「マキラ」

「シィーン……」

 顔を隠すようなターバンを巻いていたシィーンだが、口元を見せて微笑んだ。
 大きくて、豪華な花束を差し出された。

 情熱的な真っ赤な花と、可愛らしい黄色い花が美しい。
  
「わぁ綺麗! ありがとう」

「ふふ。花より先に、俺が君を抱き締めたい」

「あっ……」

 花束を抱えようとする前に、シィーンに抱きしめられる。
 一瞬心臓が跳ね上がったが、彼のぬくもりと香りにホッとするような気持ちになった。
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