亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「今夜も綺麗だ」

 改めて花束を渡された。
 片手では抱えきれずに、両手で抱える。

「……来てくれたのね」

「約束しただろう」

「……うん」

 まさか本当に逢いに来てくれるとは――。
 一体どうやって……?

 シィーンは不思議なことばかりの謎の男だが、マキラは何も聞かない。
 逆にマキラの秘密を、聞かれても困るから……。

「ほら、今日も美味い酒を持ってきたぞ」

 部屋に入って、シィーンが酒瓶を見せた。

「わぁ、嬉しいわ。おつまみ用意するわね! 座ってて」

 謎に対して何か思うより、今はこの時間を大切にしたい。
  
 マキラが、リビングの奥にあるソファへ案内する。
 いつもマキラが座るソファは二人掛けだが、大柄のシィーンが座ると一人掛けに見える。

 男性が自分の部屋にいるだなんて、慣れないけれど、シィーンだと嬉しい。
  
 シィーンは嫌いな食べ物は無いと言っていたので、サッと燻製肉を焼いて、パンとサラダとナッツを用意した。

「おお、美味そうだな。ありがとう」

「大したものじゃないけど……ごめんなさい、こんなもので」

「何を言うんだ。御馳走じゃないか! それにマキラが作ってくれたっていうのが大事だ。ほら、こっちへ」

 シィーンは、嬉しそうに笑う。
 グラスをもってきたマキラにシィーンが手招きした。

「私が座ったらソファが狭そうよ」

「此処に座ればいい」

 腕を引かれて、シィーンの膝の上に座ってしまう。
 彼の筋肉質な足の感触が伝わって、ドキリとする。

 普通なら平手打ちしてしまうような状況だが、シィーンだと全然嫌じゃない。

「も、もう、これじゃ飲めないわよ」

「ははは、俺的には最高なんだが」

 膝の上でマキラも笑う。
 まだ再会して、少しの時間。
 なのにいつもこうしていたかのように、二人で抱き合い笑う。
 シィーンはマキラを膝に抱いたままで、グラスをマキラに渡した。
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