【完結】亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される
マキラの占い……先読みの能力は本物だ。
実は彼女は、占術の国『トラプスタ』の王女だったのだ。
この首都から、遠く離れた四季のあるマキラの祖国。
七年前……彼女が十三歳の時、近隣国によって滅ぼされてしまった。
トラプスタは女性優位の国で、マキラの母が女王を務めていた。
母である女王は、先読みの力で城へ攻め込まれる前に、マキラを逃がした。
『母様ーーーー!』
『姫、お早く! 城はもう落ちます……!!』
命からがら侍女達と逃げたマキラが、どれだけ恐怖と絶望を味わい苦労をしたことか……。
その一年後に、覇王はまだ十七歳の若さで、世界を統一した。
覇王はどの国に対しても、王を処刑をするわけでもなく、その国の領主として活かす道を選んだ。
そして一切の争いを禁じたのだ。
マキラを追う者もいなくなったが、国は滅んでしまっている。
王女に戻れるわけでもない。
「大人気の覇王様だけど、私は興味ないわね……なんか色々思い出しちゃうから、好きじゃない」
覇王の話題を耳にすれば、色々思い出してしまう。
なので社会情勢は把握はしているが、彼については何も知らない――知りたくない。
生きるためには働かなければいけない。
逃亡生活を終えたマキラは、先読みの能力を使って、占い師の仕事をする事に決めた。
しかし、潜在能力での先読みの力だけでは、何もかも見えるわけではない。
うっすらと相手の未来が、脳内に映るだけだ。
先ほどの相談者は、また男に殴られて泣く姿が見えていたが……彼女が機織りを夢中で励む姿に変わった。
「今日も、相談者の人に助言することができたわね……頑張ってるわよ母様……」
マキラは相手の心情を上手に読み取り、ただ助言だけをする。
未来は自分自身に選択させる――それが自分での決め事だ。
未来が見えるという事よりも、上手に相手の話を聞いて、心に寄り添うマキラの占いは街で大評判になった。
しかし目立つ事が嫌いなマキラは、この首都の外れにひっそりと住んでいる。
ある程度の生活ができる稼ぎで十分なので、一日に数人を見るだけだ。
「今日はもう終わり。あ~冷たいフルーツジュースが飲みたいな。夕飯の買い出しも行かなきゃ」
しかし外はまだまだ暑そうだ。
この土地の生まれではないマキラには、暑い時間に出歩くと相当体力を使ってしまう。
「……もう少し夜になってからが、いいかしら。何年経っても、暑いのは慣れないわね」
その時、ドアがノックされた。