亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「乾杯だな」

「うん、乾杯」

「もう、ベールも顔を隠す必要はないだろう」

「……そうね」

 ふわりとベールとフェイスベールを取ってマキラは一口、酒を飲んだ。
 それを見てシィーンも微笑み、酒を飲む。
 久しぶりでもないのに、会えて嬉しくて、ちょっと恥ずかしくて……マキラもシィーンの瞳を見つめる。

「綺麗だな」

「シィーンは、お世辞ばかり言うのね」

「世辞じゃない。事実だよ。……口づけてもいいかい?」

 突然の言葉。
 だけど……今日、ルビーニヨンの花を窓辺に飾って彼を呼んだのは……。
 そういう意味だから……。

「……恥ずかしいわ。聞かないで……」

「マキラに泣かれたくないからな……」

「す、少しだけ……よ」

「あぁ」

 シィーンが目を細めて、男の顔をした。
 肩を抱かれて、マキラはそっと目を閉じる。

 触れるだけの、優しい口づけ。
 それを二度、三度される。
 そのたびに胸がドキリとするが、幸せも感じる。

 シィーンが傍にいるって……すごくわかる。
 存在を感じる。
 誰よりも彼が一番近くにいてくれる。
 シィーンも私に会いたいと思ってくれていた気持ちが……伝わってくるみたい……。

 うっとりするような口づけ。
 こんな幸福感は初めてだ。

 口づけが終わって、目を開けるとシィーンも少し照れたような顔をして、それがまたマキラの心をくすぐる。
 こんな顔をさせたのは自分だと思うと、まだ一口しか飲んでいないのに酔ってしまいそう。

「賭けに勝ち続けてきたが……今回ばかりは負けるかと思った」

「……でも、今回も勝ったわ」

「まだわからないさ」

 そう言うが、いつだって彼の瞳は自信に満ちている。
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