亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

 彼の賭けの最終結果は、マキラを自分のものにすること?
 そう考えると、シィーンに触れられた肩も、彼の膝に座っている脚も熱を帯びそうになった。

「と、隣に座るわ! おつまみが食べられないもの」

「あぁ、そうか」
 
 下手な言い訳をして、隣に座った。
 結局それでも密着して、シィーンには肩を抱かれて胸元にもたれるような感じ。
 よく街中で見る、カップルのようだ。
 
「そういえば、ここに来る前に露店でな」

「なぁに、また変な物があったの?」

 それから、くだらない話をして二人で笑った。
 緊張も解けたし、心に居座っていた不安も今は忘れた。

 笑ったあとに、ふっとシィーンが黙る。

「シィーン?」

 太陽のような瞳に見つめられ、マキラは少し動揺してしまう。
 
「君といると、本当に楽しい。時間があっという間に過ぎていく」

「……えぇ。私もそう思うわ」

「君のことをずっと考えていた。また逢えて、確信したよ。やっぱり俺は君に惚れている」

「……シィーン……」
 
「君を俺のものにしたい。……君が欲しい」

 心を激しく揺さぶる、愛の言葉。
 シィーンには求められるだろうと、わかってはいても……痺れるほどに甘美な言葉だ。

 でも……。

「……私……」

 マキラも、ずっとシィーンのことを考えていた。
 出逢ってまだ少し。
 なのに、逢いたくて逢いたくて、ずっと彼のことばかり考えていた。

 今もずっと、彼と一緒にいたいと思っていた。
 シィーンが好き。
 貴方のものにしてほしい……。
 
 でも自分は、もうこの土地を去る。
 城に召喚されるわけにはいかない……。
 逃げるのが嫌いなのに、逃げなければいけない。
 それは元王女としての運命だから……。
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