亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「……それだけ、答えればいい……?」

「あぁ。あとは君が話をする気になった時でいい」

「ひとつ……聞いていい?」

「もちろん」

「この褐色じゃない……白い肌に違和感はない……?」

 遠回しな言い方だが、この地域の生まれではないという事だ。

「とても美しいよ。見ていたらすぐにでもまた愛したくなる……褐色の肌の君も、白い肌の君も両方味わえて、俺はすごく好きだな……」

「あん! もう、だめよ……じゃあご飯を食べてから話をするから……って、もう……あっ」

「可愛いよ。君の身体を洗いたい」

 嫌悪することもなく、どうして褐色にしているのかとも聞くこともなく、シィーンはただマキラを愛してくれた。
 むしろ『何を気にしている?』と言わんばかりな態度で、まだらな部分にも口づけをくれる。 

 それから二人で風呂に入って、洗い合って、拭き合って……。
 マキラは後ろから抱きしめられながら、食事の支度をした。
 何をするにも、密着して、口づけして、抱き合って、微笑んで、離してくれない。
 
 ただただ甘い甘いだけの、恋人の時間。

 だけど心に重く伸し掛かる『城への強制召喚問題』。

 シィーンはどうにかしてくれると言ったが、マキラにはどうにかできるとも思えないような事だ。
 だから、少しでもマキラは、この甘い時間を長く過ごしたかった。

 食事をとった後にマキラは、リビングでソファに座ったシィーンにお茶を出す。

「さぁ話を聞かせてくれ」

 この時間には、いつもハルドゥーンが訪ねてきていた。
 しかし今日、彼は来る気配はなさそうで安心した。

 さすがのシィーンも、ハルドゥーン将軍と鉢合わせすれば驚くだろう。
 
「明日は、覇王生誕祭の前夜祭だから……来ないかな……」

 きっと城でもやる事が色々とあるだろう。

「ん? 覇王生誕祭が何か関係があるのか?」

「……私がここを出る理由が……実はこれなの」

 マキラが事情を説明し、ハルドゥーン将軍からの手紙を見せた。
 シィーンが受け取る。

「……これは……」

 マキラが占い師として城に呼ばれる事は、一般的には名誉な事だ。
 だからハルドゥーンも、まさか断るとは思っていなかったに違いない。

 しかし名誉な事なのに何故断る? だとか、そんな事はシィーンは一切言わなかった。
 ただ眉をひそめて、ハルドゥーンからの手紙を最後まで読んだ。

 はぁ……と深い溜め息を、シィーンが吐く。

「よくわかった。これが解決すれば君は此処を出なくていいんだね?」

「えぇ……まぁ……そうね」
 
 マキラとしても、この平穏な暮らしは楽に手に入れたものではない。
 出来るならば、此処で暮らしたいのが本音だ。

「そうすれば一夜限りではなく……君は永遠に俺のものでいてくれるんだろう」

「そ、それは……」

 此処にいることができれば、シィーンとの甘い時間を続けていける……。
 彼とまた再会してからの時間は楽しくて、幸せで……。
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