亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

 マキラの心に願いが思い浮かぶ……彼のものでいたい。

「でも無理よ。相手は覇王の片腕将軍に、覇王の婚約者、いずれは王妃様よ。そんな人に楯突いたらどうなるか」

「覇王に婚約者などはいないんだがな……」

「え? どういうこと?」

「いや……まぁいい。俺に任せてくれ、解決してみせるよ」

「でも、どうやって……」

 思わず聞いてしまった。
 だがシィーンは『任せてくれればいい』と軽く笑った。
 
「これが解決できれば、君は俺のものでいてくれるね?」

「シィーン……えぇ。私も本当は貴方から離れたくない」

「そうなると、わかっていた」

「貴方って人は……また賭けに勝つつもりなのね?」

「あぁ、そうだ。これからも勝ち続けるよ」

 まるでもう解決したかのように、力強く、離さないというように口づけられた。
 なんの保証もないのに、シィーンには何か人を納得させてしまう力がある。
 
「またすぐにでも会いたいが、少し仕事が立て込んでてね。次に会えるのは1週間後かな」

「そうなのね。覇王の生誕祭があるのに、お仕事だなんて……」

 生誕祭に働くのは飲食店や土産屋で殆どで、他の仕事は休暇になるのが一般的だ。
 シィーンは、飲食店や観光業の関係者なのだろうか?

「はは、仕方ないのさ。マキラは覇王のパレードは見に行くのか?」

「……みんなに怒られると思うけど、覇王様はあんまり……ね」

「そうなのか。覇王は嫌いか」

「嫌いだなんて……そういう感情ではないわ。ただ色々と複雑なの……」

「そうか。複雑か」

「嫌な気分になった? この国の……この世界のみんなは覇王様が大好きだもの」

 覇王は世界統一と平和をもたらした存在。
 彼を悪く言う者は、統一で贅沢三昧できなくなった貴族や王族達で一般市民からは絶大な人気だ。
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