亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

マキラの災難


 断ったにも関わらず、ハルドゥーンはマキラを訪ね扉の前で頼み事をしてくる。

「どうか少しの時間でも、姫の相談に乗ってあげていただけませんか」

「無理です」

「マキラ様……エリザ姫は大変お困りで……」

「帰ってください! お願い!」

 マキラは、ハルドゥーンが最初自分の境遇を知っているのでは? 元王女を誘う罠? と思ったがそうではないらしい。

「マキラ様、どうかお願い致します。エリザ姫のワガママ……いえ要望が進まねば……若が……」

「私には無理です! 帰ってください!」

 将軍の腹から出る張りの良い声は、そこら中に響き渡っていそうで怖い。
 いつまでこの押し問答をさせる気!? とマキラは苛立つ、それでも負けない!
 見えはしないだろうが、マキラは毛が逆立った猫のように威嚇し続けた。
 
「今日のところは……退散いたします」

 虎将軍の彼の呟きが扉の向こうで聞こえた。
 ハルドゥーンがエリザ姫の願いを叶えたい理由は、彼が忠誠を誓う若……つまり覇王のためという事か。

「まさか、覇王が婚約者を悩ませて婚約破棄されそうだとか……??」

 覇王……婚約者の元帝国の姫……覇王の部下将軍……。
 マキラにとっては、関わりたくもない人間達だ。
 
「そろそろ此処を離れる時かしら……はぁ」
< 5 / 72 >

この作品をシェア

pagetop