亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

逢い引き・豪華なお屋敷


 誰かが『きゃー! こっちを見たわ』『すごい! 沢山手を振ってくれてる』と叫んだ。

「本当だ……すごく小さくしか見えないけど、こっちを見て手を振ってるわ。ふふ、知り合いでもいるのかしら? シィーンに自慢してあげましょ。あ~もう退散だわ。疲れた……」

 マキラは溢れる人混みを避けながら、街外れの我が家へ帰った。
 あと二日ほどお祭りは続く。
 お祭りの間に、恋人と喧嘩したという急な相談も二件入り、マキラ自身はお祭りとは無関係に過ごした。

 依頼者の女性に『先生、綺麗になった?』とか『いつも以上に寄り添ってくれて嬉しかった』と言われ、それもシィーンのおかげかもしれない……と感じる。

 シィーンに抱かれたベッドで眠ると、あの愛と快楽に溺れた時間を思い出して身体が熱くなってしまう。

「私……初めてだったのに、あんな……そしてまた……思い出して、いやだわ……私ってこんな女だったのね」

 自分が淫らに感じるが、あの時の雄々しいシィーンは忘れられない……。
 シィーンに会いたい気持ちが募る。
 前夜祭、パレード、お祭り二日が終わっても、あと三日。
 そんなマキラに手紙が届く。

 返信不要と書いたのに、侍女から? と思ったのだが……。

「シィーン! 手紙を寄越すだなんて、嬉しいわ」

 すっかりシィーンに心を奪われていると自覚しているが、シィーンも手紙にたっぷりと会えない寂しさと愛を書き綴ってくれている。
 シンプルな飾りのない封筒と便箋で、文章は短いのにとても愛を感じた。

「こんな素敵な恋文も書けるのね……」

 何も知らないのに、あの男が何でもできる才能あふれる男だという事が何故かわかる。
 
 手紙の最後には、会える日が一日早まる事。
 そして迎えに行くので、夕飯を外で食べようという誘いだった。
 
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