亡国王女の占い師は、情熱の地で若き覇王に甘く優しく溺愛される

「わぁ会える日が早くなったのね! 外食……ふふふ楽しみ。どうしよう、アクセサリーとハイヒールのサンダルも買おうかしら」

 精一杯生きてきて、楽しみだって作ってきた。
 でもこんなにも心が踊る経験は、初めてかもしれない。
 マキラは手紙を、胸に抱いた。 
 
 そして二日後。
 いつも以上に気合を入れてしまったマキラは、美しく輝いている。
 なんだかんだで、全て新しく購入してしまった。
 こんな贅沢も初めてだけど、どうしてもシィーンに可愛く思われたい。

 夕方からずっと、ソワソワして何度も鏡を見てしまった。
 ノックの音に、飛び上がる。

「迎えに来たよ。マキラ」

「シィーン……!」

 嬉しさで急いで、ドアを開けた。
 また花束を抱えていたシィーンだったが、彼はすぐにマキラを抱き締める。

「マキラ……! 会いたかったよ」

「うん……私も……んっ……」

 花束がパサリと玄関に落ちて、シィーンの熱い口づけをマキラも受け止める。
 激しく舌が絡んで、お互いの身体に熱が帯びていくのがわかった。

 このまま、抱かれてしまいそうな情熱的な口づけに、マキラの身体も心もトロけそうになる。

「ん……はぁっ……あんまりに綺麗だから我慢できなかった……今日の君も、とても素敵だ」

「もう……でも……嬉しい」

「今すぐ抱きたくなるが……夕飯前だ。そこは我慢だな。夜のお楽しみだ」

 正直すぎる男の言葉に赤面してしまうが、マキラの身体もシィーンを求めているのを感じた。
 抱き合って微笑み合う。
 今までの寂しさが吹き飛んで、心が満たされていく。
 嬉しそうに笑うマキラを見て、シィーンは彼女の綺麗な薄紫色の髪を撫でた。

「可愛いマキラ……明日の仕事は早いのかい?」

「明日の占いは午後からなの。でも夜まで予約が入ってるわ」

「売れっ子なんだな……じゃあ明日の昼までは俺が君を独占してもいいかい?」

「えぇ、もちろん! 貴方もお仕事は大丈夫?」

「マキラとの時間を作りたかったから、なんとかしたよ」

「嬉しい、すごくすごく会いたかったの!」

 まさか夜だけではなく、明日の昼まで一緒にいられるなんて……!
 嬉しくて抱きついてしまう。
 シィーンも笑って、マキラを抱き上げてクルクルと回った。
 
「俺もさ。じゃあ少し先に馬車を止めてあるから行こうか」

「え、そうなのね。わざわざありがとう」

「質素な馬車で悪いが」

「そんな事、思ったりしないわ」

 馬車をマキラのために用意してくれたのだ、気遣いが嬉しい。

 マキラは貰った花束を花瓶に活けて、一泊の支度をして、荷物をまとめる。
 自然に二人共、ベールやターバンで顔を隠して外へ出た。

 外へ出た二人の手は、しっかりと握られている。
 特に人通りもないが、初めての恋人同士の手つなぎ。
 大きな温かい手、つい嬉しくなって微笑んでしまう。
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